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女子大学生の「性」と「男子」

──6割以上の女子学生が大学時代に「性」を体験する時代。
変な男に捕まらないで──そんな親の心配もあるだろう。
だが、彼女たちの話を聞くと、事態はもっと深刻だ。──

 二十歳までに処女を捨てたい。
 入学当初、青山学院大学3年の女子学生(21)は焦りを感じていた。中高一貫の女子校時代、恋愛やセックスとは無縁だったが、二十歳で未経験は遅れている──そう思っていた。
 実際、「青少年の性行動全国調査」によれば、女子大学生の61.1%はセックスを経験している=28ページチャート。
 彼女は大学入学後、バイト先の学習塾で初めての彼氏と知り合った。バイト仲間で車の免許の合宿教習に参加した。
 昼間は講習を受け、夜は宿泊先の彼の部屋で過ごした。お互い、好意があることは薄々感じていたが、彼は何もしてこない。一つ年上で中高一貫の男子校出身の彼は、バイト先では「アルパカさん」と呼ばれていた。典型的な草食タイプだ。
 合宿7日目、眉間にしわを寄せ、何か言おうとしている彼の背中をドンドン叩いた。
「何が言いたいの?」
 彼女も彼も実家暮らし。二十歳まで残り半年。何とか合宿中に体験したい。そう思った。

■キスさえせずに始まる

「好きだから、つき合って」
 何とか彼から言葉を引き出しベッドになだれ込んだが、お互いコンドームを持っておらず、その日は断念。翌日深夜1時頃、一緒に寝ようとすると、彼が無言で立ち上がった。トイレに入り、待つこと5分。
「夜中に大便かよ!」
 彼女はそう思ったが、彼はTシャツ一枚で出てきた。勃起した性器にコンドームが被せられている。キスさえせず、迫ってきた。当然、うまくいかない。結局彼は、自分の手で果てた。
 合宿後もデートを続けたが、一向に誘ってこない。しびれをきらし、ホテルに誘った。
「えっ、行くの?」
 彼は驚いた様子だった。二十歳を前に、彼女は何とか初体験を終わらせた。
 今回、15人の女子学生に話を聞いた。二十歳前後の健康な女性として、セックスに興味を持つのは自然なことだ。しかし、そこには様々な壁が立ちはだかっていた。一つは、「草食男子」という壁だ。
 関西の女子大教授は、学生からの恋愛相談が、ここ1、2年で大きく変化したと話す。
「以前は、デート場所や彼へのプレゼントなどの相談でした。最近は、お互い意識しているのに告白してこない、つき合っているのに手を出してこない。私は嫌われているのでしょうか、という昔では考えられない相談が増えています」
 慶応大学4年の女子学生(22)の彼も草食男子。大学入学後にできた初めての彼氏とは、メールのやりとりだけで終わってしまった。同じバドミントンサークルに所属する2人目の彼氏とは、何度かデートをした。
 しかし、2カ月たっても手さえ繋ごうとしない。不安になった。クリスマス、一人暮らしをする自分の部屋に誘った。プレゼントを交換し、甘いムードになることを期待したが、
「実家のクリスマスパーティーに参加しなければいけない」
 彼はそう言って、2時間ほどで彼女の部屋を後にした。
 もちろん、男子学生全員が草食化しているわけではない。都内の大学のある教授はこう話す。
「授業の合間にラブホテルに行くカップルもいる。恋愛に積極的な者と、そうでない者の二極化が進んでいます」
 冒頭の全国調査に関わった山口大学の高橋征仁准教授は、二極化の原因をこう話す。
「以前はクラスのなかで性についてみんなで話し合った。いまは携帯電話などの影響で少人数での情報のプライベート化が進み、グループ間に差が生まれている。性体験の早期化とは逆に、男子の自慰体験が遅くなっているのがその表れではないか」
 恋愛やセックスは、相手があってこそ成り立つもの。食べられるローションなど、オリジナルのラブグッズを販売する通販サイト「LCラブコスメティック」では今春、意外な商品の売れ行きに驚いた。
「男性をやる気にさせるベッド専用の香水を3500円で売り出したところ、2日間で2千個が売り切れました」

■AVを糾弾したい

 冒頭の女子学生は次に出会った男子学生も草食系。今は出会い系サイトで年上男性との関係を求めている。
「草食男子」に加えてもう一つ、女子学生の前に壁が立ちはだかる。「AV男子」だ。
 慶応大学3年の女子学生(20)は、飲み会の席などで自分を「やらはた」(セックス未経験で二十歳を迎えるの意)、「DT50」(バイクの車種名を模して、童貞=DTのまま50歳になるの意)などと自嘲する男子学生を、
「ソープに行けよ」
 と叱り付ける。「淫乱女」と言い返されることもあるが、彼女は真剣だ。
 大学生になり、一つ年下の彼とつき合った。彼の部屋でいざ初体験となったとき、一言こう言われた。
「よだれを顔に垂らして」
 イヤだと言うと、口でして、とリクエスト。それも断ると、
「あなたのウインナーをくわえたいのって言って」
 強引に下着に手を入れる彼を制止し、彼女のほうから股間を刺激した。射精すれば収まってくれると考えた。だが、一向にその気配はない。彼は言った。
「自分でも40分かかる。そんな弱い力じゃいけない」
 彼女は今夏、ゼミ仲間と女性向けアダルト雑誌を作った。女性による、女性のためのオナニーガイド本だ。彼女は言う。
「AVを糾弾したい。男子が見ているアダルトサイトは、3分ほどの映像でフェラチオと挿入だけ。それが当たり前だと思う男ばかりなら、自分で楽しんだほうがいい」
 話を聞いた15人中、5人がマスターベーションをしていた。

■ゲームに興じる兄

 性に対する考え方は、家族の影響も大きい。
 法政大学2年の女子学生(21)は、経験人数が10人を超える。厳格な家庭に育ち、
「息がつまりそうになったこともある。大学進学を機に東京に出て、遊ぼうと思った」
 中高一貫男子校から国立大学に進んだ一つ上の兄がいる。あるとき、兄が自室でにやけながら恋愛シミュレーションゲームに興じる姿を見た。
「ネットの世界に入り込み、リアルな女性に興味がない。大学デビューするにも、男子は高校までの経験の差が大きく、なかなか異性にとけこめない」
 東京医科歯科大学3年の女子学生(22)も、すでに10人以上と経験した。一人暮らしの家には避妊具が置いてあるが、自分からはすすめない。
「コンドームをつけてするのは好きじゃないし、部屋にあると逆に、セックスが好きなんだと思われる」
 男子学生たちと経験する中で気が付いたのは、いわゆる上位校に通う人ほど自分で避妊具をつける、ということだ。
「将来に対する考えがしっかりしている人は、セックスも真面目に考えているんだと思う」
 早稲田大学3年の女子学生(22)も、同じ印象を持つ。
「当たり前のように避妊具をつけずに入れようとしてきた人もいて、何か違うなと感じた」のは、定職に就かず、将来の目的もない29歳の男性だった。
 彼女も経験人数は10人。性体験が豊富な女子学生は一人暮らしに多いが、彼女は実家暮らし。彼氏は全員、家族に紹介している。1カ月程度で別れた人もいるが、母親は寛容だ。
「今は人生経験だから、いろんな人を見なさい」

■恋愛する学生と就活

 早稲田大学3年の女子学生(21)は高校卒業間際、初めての彼氏ができた。体の関係を求められたが、断った。
「私のことが本当に好きなら、できないでしょ」
 母親に、大学生までは男性とつき合うものではない、と言われて育ったことが大きい。
 母と父はお互い、初めての人。今も愛し合っているように見える。そんな両親のようになりたい。サークルで知り合った同い年の彼氏と、初体験した。就活を前に、お互いの人生設計を話し合っている。
 性的欲望自体は、否定されるものではない。就活に関する著書が多数ある立教大学大学院の小島貴子准教授も、こう話す。
「恋愛相談をしてくる学生は、勉強に対しても積極的に質問をしてくる。性欲は人間の根源的な本能で、生きることに対する意欲の表れ。恋愛に積極的な学生は、就活の場でも強い」
 取材に応じてくれた女子学生のうち、実家に住む学生には門限があった。一人暮らしの学生は、記者の差し出した名刺を両手できちんと受け取った。そんな真面目な彼女たちの告白だ。

編集部 澤田晃宏

(8月9日号)
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純愛・恋愛 | 【2015-10-02(Fri) 16:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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